独り言多めの読書感想文

⭐️オススメの本について好きにおしゃべり⭐️

『夜明けのすべて』映画感想

">♯男女間の友情♯パニック障害♯月経前症候群♯松村北斗♯距離感♯自死を選ぶ時♯夜明けのすべて "> 1、 男女間の友情は成立するか これは作中にセリフとして出てくる。松村北斗さん演じる山添くんは、自分で発信した問いに自分で答える。 〈──けど、3回に1回くら…

偽りの表現者

「初めて見た時バレリーナかと思った」 ポニーテールにパッションピンクのシュシュ。膝丈のフレアスカートにフラットシューズ。当時から並行して社会人やってた私は、同じ色の日々を過ごしながら、まだどこか自分に夢を見ていて、その潜在的な変身願望が普段…

【祝映画化】朝井リョウさん『正欲』

">今週末公開される映画『正欲』のため、改めて本作を読み返したので考察、感想文してみる。相変わらずガッキーかわいい。 この作品の根幹は人類存続の根幹、種の保存に直結する「性」にあり、そこから派生する多様性、ある種の「柔軟性」について、複数の視…

『キリエのうた』映画感想

">『キリエのうた』すごく良かった。私にとってこの映画が今年のベストだ。3時間があっという間だった。 ふと思い出したのは『さくらん』。吉原遊郭を舞台に身売りされた少女の半生を描いたもので、この映画、最初から最後まで椎名林檎さんの楽曲が流れてい…

ニコイチ【後編】

">思うに自信がなかった。だから大層好かれても「自分なんかを」好きになる意味が分からなかった。fさんが著書『いつかは別れる。でもそれは今日ではない』で、当時好きだった小学校の先生に言われたという言葉が象徴な気がしているので転写する。 "> 〈「あ…

ニコイチ【前編】

">読書感想文 作品の一部を借りた自分語り "> ">極力ウソはつきたくない。例えば「──ちゃん俺のこと好きやろ」と言われる程度なら、正面切って「はい」と答えるくらいには。直接ウソはつかずとも「言わないだけ」という手法ならよく使うが。 "> "> "> 学生の…

文系の独り言〜村木嵐さん『まいまいつぶろ』、『阿茶』を添えて〜

まず引っかかったのは「然り」の対を「不然」と表記していること。通常「然り」の対は「否」であり、不然は中国語の表記だ。人によってはこの2字の間にレ点が見えるかもしれない。 学校で習ってきた古文、漢文。最終それぞれ全体の4分の1の点数を占めていた…

【読書感想文もどき】文系が正面から物理と数学と向き合ってみたのだけれど

">「どうやら乳糖不耐症みたいで、頑張っても飲めないんだ、牛乳」 という感じに、残念ながら物理も数学も絶望的に適性がなかった。『知識ゼロでも』や『文系もハマる』といった文言に釣られて購入した本の著者名に「川」と「康」を見つけた段階で脳みそは『…

【水溜まりを軽やかに飛び越えるように】芦沢央さん『汚れた手をそこで拭かない』

">〈力を入れるのは誰でもできるけど、力を抜くのは意識しないとできないんだよね〉 ">何のことない。そんな風に教えてくれたのは馴染みの歯科医師。口渇。仕事中、緊張や水分補給が疎かになることによって乱れる口内環境。そんな時、頬を膨らませるだけでも…

【あなたは嫌いでも私は好きなので】浅野いにおさん『ソラニン』

">いにおはきっと、自分が生み出したはずの作品「ソラニン」が嫌いで、本当は自分が伝えたい音ではないのに、売るための作品を世に放った。結果不本意な注目のされ方に、けれど事実その作品によって生かされる現実に、嫌気がさしたというよりかは溜まりに溜…

【幸せを願うは願われることだった】東野圭吾さん『容疑者Xの献身』

東野圭吾さん『容疑者Xの献身』を、読書感想文してみる。 映像化され、何度も再放送されている作品に、通行人Aがおこがましい……! という問題はスルー。だって個人の感想だもの。それが私の愛し方よ。この作品を読んだ上で軽々しく愛とか言える私は恥を知る…

【簡易グルメトリップのすすめ】柚木麻子さん『その手をにぎりたい』

柚木麻子さん『その手をにぎりたい』を読書感想文してみる。 残念過ぎる描写に「スケッチから始めようか」とアドバイスして下さった学生時代の某先生、私は元気です。描写関係なく元気につぶやいてます。間違えた。そんな「心情しかつづって来なかった私」が…

【言いたいことが言えない時に読みたい】fさん『真夜中乙女戦争』

fさん『真夜中乙女戦争』を、読書感想文してみる。 3年前まで「好きなものに猫を入れる人間」が嫌いだった人間がおこがましい……! という問題はスルー。だって感想だもの。個人の主観だもの。勝手に好きに解釈したっていいじゃない。それが私の愛し方よ。世…

【本当は責任をとりたかった】朝井リョウさん『少女は卒業しない』

">朝井リョウさん『少女は卒業しない』を、読書感想文してみる。(「月○本新作を仕上げる」というハードルを自ら設定してこなしていたという作家さん相手に)未熟者がおこがましい……!という問題はスルー。感想だもの。個人の主観だもの。勝手に好きなんだも…

付録2、ダイヤの5の言い分【後編】

"> 美知代が壮太を好ましく感じていたのは、「相似、自分と似たものを持っていて、あるいは今自分の抱えている責任から解放してくれるのではないかという甘えが発生していたため」と仮定してみる。 見えない。書かれてはいないけれど、弱みを見せられないと…

付録2、ダイヤの5の言い分【前編】

"> 大富豪において、どうして3から順に強くなっていくのか。それはCから始まるコードがごとく、初見で「ん?」となること必須。ただ、何か訳があったからに違いない。その訳とやらを、仮に「最低限己が意思を持つ者の目安」としてみる。最も弱いのは3、つま…

付録1、五十嵐壮太は橙【後編】

"> けれども時を同じくして〈退屈から逃れるためにわざと波立てずにいられなかった〉癇癪のツケが回ってくる。平穏な人間関係。平和が尊いなんて、実際失ってみないと気づけない。私の口にした陰口が巡り巡って裏で手を繋いだ。目配せ。点が線になる。そうい…

付録1、五十嵐壮太は橙【前編】

"> 男女の友人関係を成立させるというのは、ある意味恋人になることよりも難しい案件らしい。アテネパンテオン大学の研究で、男女約300人に統計をとった結果、友人関係とした男性が女性に惹かれるのが68%、女性が男性に惹かれるのが46%で、同性のそれに比…

【4、ジョーカーが強い本当の理由】朝井リョウさん『スペードの3』読書感想文

"> 最も力を持ち、誰もが羨むカード「ジョーカー」 ジョーカーは愛季。数字も記号も当てられない、枠の一歩外にはみ出た存在。基本強いために自由度が高いのもその特徴の一つ。 だから求められる。誰も教えてくれない正解を。 "> 美知代が気づいていないこと…

【3、キングは勝手に落ちた】朝井リョウさん『スペードの3』読書感想文

"> 五十嵐壮太は「この中で最も力を持つ者」で、美知代にとって〈男子は声が大きい。理科の先生が実験の説明をしていることなんてどうでもいいみたいだ。怒られるのが怖くないのだろうか〉という存在。 規定の枠内で生きる集団。そこにはルールがあって、け…

好きな本で自己紹介10選

『正欲』朝井リョウ『汚れた手でそこを拭かない』芦沢央『真夜中乙女戦争』f『その手をにぎりたい』柚木麻子『忍びの国』和田竜『地獄の楽しみ方』京極夏彦『魍魎の匣』京極夏彦『解夏』さだまさし『少女は卒業しない』朝井リョウ『ソラニン』浅野いにお(敬…

【2、勘違いと書いてスペードの3と読む】朝井リョウさん『スペードの3』読書感想文

"> 配られた手札の中にスペードの3を見つけた時の心理が、そのままその人の視野の広さを表す。客観視は基本できない。できるのは実際にその立場をやってみて得られる一感想であり、それさえ同一ではない。けれど想像することはできる。その想像の中、あなた…

【1、小学6年生の大人】朝井リョウさん『スペードの3』読書感想文

スペードの3読書感想文

朝井リョウさん『スペードの3』読書感想文、序

スペードの3読書感想文

汚部屋理論〜水卜アナを添えて〜

いかん。こう書くと水卜アナが片づけできないみたいだ。違うよ。 これは7月24日『有吉ゼミ』でのゴミ屋敷特集での水卜アナのコメントが残ったので、そのために書き残すものだ。 世に言う「正論」 最近ネットでの炎上、言葉での暴力を作品内に盛り込んだもの…

half loversアンコール③solo play 4月14日(木)2時~〈後編〉

肩に立てられた爪。その二の腕にキスをすると、つかんでいた手首を解放して「よっ」と反転、自分の上に乗せる。頬にその髪がかすめた。「隠すな」 全部「見せろ」 もうゆでだこ状態の弟子は、俺の胸に顔を押しつけると、首を振った。 あー。もうクソッ。 か…

half loversアンコール③solo play 4月14日(木)2時~〈前編〉

一 そこはスノボの時泊まった宿だった。 結局使うことのなかった部屋備え付けの露天風呂。湯けむりで曇った大窓。 間接照明。こっちに背を向けて座っているのは弟子だ。その隠れた指先。薄手の浴衣は小さな身体にはどうにもこうにも大きく見える。「寒くない…

half loversアンコール②陽だまりの午後 3月19日(土)14時~〈後編〉

手に取って間近で見た手は、離れてみるよりずっと大きくて、皮膚が厚くて、ごつごつしていた。平らで横に長い爪。激しい鼓動は変わらず、それでも少しずつ少しずつなじんでくる。少しずつ、少しずつ。 少女は男の手のひらと手のひらを合わせると「全然違う」…

half loversアンコール②陽だまりの午後 3月19日(土)14時~〈前編〉

一 昼下がり、陽だまりの中で動く影は三つ。一人はノッポであとはチビ。バランス良くノッポを挟んで押しくらまんじゅう。 三月十九日。まだ寒さの残る中、それは原始的な保温術。「シノノメサカタザメって知ってる? サメって名前ついてるんだけどエイのなか…

half loversアンコール①アンサーソング 3月14日(月)18時半~

〈一ヶ月は、長い?〉「・・・・・・まだ痛いですか?」 少女が目を開けると、心配そうにのぞき込む少年と目が合った。 最初ほどではない。最初ほどではないが、息のしづらいような苦しさは続く。 容量一杯。キツい、というのが正直なところだった。必死で息…