独り言多めの読書感想文

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half loversアンコール①アンサーソング 3月14日(月)18時半~




〈一ヶ月は、長い?〉

「・・・・・・まだ痛いですか?」
 少女が目を開けると、心配そうにのぞき込む少年と目が合った。
 最初ほどではない。最初ほどではないが、息のしづらいような苦しさは続く。


 容量一杯。キツい、というのが正直なところだった。必死で息をする。その首にしがみつくと同時に抱きしめられた。
 相変わらずやさしい光だけを通すカーテン。橙を含み始めて静かに明度を下げていく。冷える肩先にその唇が当たった。
 容量一杯。息苦しくて、キツくて、本来避けたがる状況を受け入れるのは、それ以上の喜びがあるからだ。その頬にキスをする。
「好き」
 少女が伝えると同時にうめき声がした。抱きしめていた腕がゆるむ。ついた肘。苦しそうな表情。その口が開く。
「・・・・・・ごめん、もう」
 ふっと力が抜ける。少年は奥まで挿し込んでいたものを一旦引くと、次の瞬間それ以上の力で突いた。
「・・・・・・っ!」
 相変わらず苦しい。キツい。でもどうやらそれは少女だけではないようで。
「聖っ」
 頭を抱え込まれる。頭のてっぺん、足のつま先まで響く振動。余裕のない息づかいに、かえって気持ちがあおられた。
〈心を突き動かすだけの変化を起こせるのは、何のてらいもないあんなまっすぐな言葉です〉
 感情。既存のものを一発で壊してしまう力。変化を起こす。心にも、身体にも。
「あっ」
 気づく。身体が順応を始める。少年を受け入れようとする。開いて、締まる。捕まえようとする。
「雅」
 締まる。奥の方が閉じていく。いっそ恐れを覚えるような、それは予感。たぶん心と身体は自分が思っている以上に深くリンクしていて。
 抱きしめられる。その横顔にもう気遣いは見られない。それがただただうれしかった。
 一瞬浮かんだのは不謹慎な思い。
〈いなくなられては困ります〉
 この子が聞いたらきっとやさしく頭をなでられる。そうしてきっと悲しそうな目をする。だから胸の奥の方にしまいこむ。
 少女の目の端に涙がにじんだ。
「聖」
 声がかすれる。意識が遠のく。真っ白。その肩にしがみつく。キツくつむったまぶたの裏に浮かんだのは白い月。
 満ちる。一杯になってあふれる。頬を涙が伝う。その瞬間、腕の中にいた身体が大きく震えた。低いうめき声。
 目を開ける。見慣れない天井。部屋中がこの子の香りで満ちていた。その頭をなでる。
「聖」
 抱きしめる。愛しさで、窒息する。
 涙で何も見えない。でも、必要なかった。相手はこの子で間違いなかった。

 ねぇ、あなたに会えて本当によかった。
 不謹慎でごめんね。でもあたし
 死んでもいいわ。



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