独り言多めの読書感想文

⭐️オススメの本について好きにおしゃべり⭐️

2020-09-01から1ヶ月間の記事一覧

half loversアンコール③solo play 4月14日(木)2時~〈後編〉

肩に立てられた爪。その二の腕にキスをすると、つかんでいた手首を解放して「よっ」と反転、自分の上に乗せる。頬にその髪がかすめた。「隠すな」 全部「見せろ」 もうゆでだこ状態の弟子は、俺の胸に顔を押しつけると、首を振った。 あー。もうクソッ。 か…

half loversアンコール③solo play 4月14日(木)2時~〈前編〉

一 そこはスノボの時泊まった宿だった。 結局使うことのなかった部屋備え付けの露天風呂。湯けむりで曇った大窓。 間接照明。こっちに背を向けて座っているのは弟子だ。その隠れた指先。薄手の浴衣は小さな身体にはどうにもこうにも大きく見える。「寒くない…

half loversアンコール②陽だまりの午後 3月19日(土)14時~〈後編〉

手に取って間近で見た手は、離れてみるよりずっと大きくて、皮膚が厚くて、ごつごつしていた。平らで横に長い爪。激しい鼓動は変わらず、それでも少しずつ少しずつなじんでくる。少しずつ、少しずつ。 少女は男の手のひらと手のひらを合わせると「全然違う」…

half loversアンコール②陽だまりの午後 3月19日(土)14時~〈前編〉

一 昼下がり、陽だまりの中で動く影は三つ。一人はノッポであとはチビ。バランス良くノッポを挟んで押しくらまんじゅう。 三月十九日。まだ寒さの残る中、それは原始的な保温術。「シノノメサカタザメって知ってる? サメって名前ついてるんだけどエイのなか…

half loversアンコール①アンサーソング 3月14日(月)18時半~

〈一ヶ月は、長い?〉「・・・・・・まだ痛いですか?」 少女が目を開けると、心配そうにのぞき込む少年と目が合った。 最初ほどではない。最初ほどではないが、息のしづらいような苦しさは続く。 容量一杯。キツい、というのが正直なところだった。必死で息…